(原文はB5判 縦書き3段組み)
東 京 凌 霜 謡 会
十一月例会は一日(第一土)午後一時より毎回と同じく新宿区西大久保の出光寮で開催、
近藤長老以下九名出席、下記五曲を午後五時過ぎ終了、晩餐を共にして午後六時半に散会。
素 謡
子方 中田あや(故中田友次郎氏大2夫人)
邯 鄲 シテ 近藤得三(明43) ワキ 安村慶次郎(昭4)
ワキツレ 秋葉四郎(大9)
頼 政 シテ 秋葉四郎 ワキ 高田尚子(故高田透氏大5夫人)
定 家 シテ 丸山語郎(大14) ワキ 岩田 映(大9)
ツレ 秋葉四郎
葵 上 シテ 松山 緑(昭5) ワキ 中田あや
子方 高田尚子
船弁慶 シテ 三田三郎(大5) ワキ 安村慶次郎
ワキツレ 丸山語郎
附祝言
(五〇・十一・二安村)
一月例会
昭和五一年謡初めは一月十日(第二土)午後一時より品川区上大崎の日立製作所大崎別館
二階日本間で開催した。明るい日ざしと閑寂な林泉のたたずまいは古式豊かな初謡に相応し
い雰囲気を提供してくれた。今年は珍らしく多人数の出席通知があったが、新年に入ってか
ら東京には香港風邪とやらが大流行し、次々に出席取消しが相次ぎ結局は出席十一名と例年
並みに止まった。
今年三月に満八十八才を迎えられる近藤得三先輩の血色の良い福々しい格幅で朗吟せられる
神歌から始まり「野守」の鬼が、かっぱと大地を踏んで謡い終わるまでの六曲、いずれも上出
来で、当館は日立製作所の幹部同好の士に藤波紫雪師が定例教授に來る場所で従業員も玄人の
謡には耳馴れて居るのであるが、茶菓を運ぶ女中達が「今日はどちらの先生方の御集まりです
か」と尋ねる位の出来栄えであり、東京凌霜謡会も先ずは素人の会として相当のものとの自信
を新たにした次第である。
当日の芽出度い番組とお役は下の通り。
昭和五一年謠初め番組
神 歌 近藤得三(明43) 千歳 安村慶次郎(昭4)
幸寿丸 秋葉四郎(大9)
美女丸 丸山語郎(大14)
多田満仲 三田三郎(大5)
仲 光 シテ 岩田 映(大5) ワキ 近藤得三
羽 衣 シテ 小林吉夫(昭4) ワキ 岡田茂義
東 北 シテ 小西幸之助(大7) ワキ 三田三郎
トモ 岩田 映
ヒメ 秋葉四郎
景 清 シテ 丸山語郎 ワキ 渡辺藤四郎(昭13)
野 守 シテ 安村慶次郎 ワキ 丸山語郎
附 祝 言
終って和やかな晩餐会、近藤長老の発声にて乾杯、当会の弥栄と会員の不老長寿を祝った。
今回新会員に渡辺藤四郎君を迎えた。同君の筋の良い謠(景清ワキ)には感服した。
本年の月例会は第二土曜(午後一時より)、場所は原則的(借用が許される場合の意)に
新宿区西大久保二ノ三五三、出光大久保寮(電話〇三―二〇二-三四〇〇、管理者高宮美智
子)に致します。在京の方は申すに及ばず、ご旅行者、ご滞在者各位の飛入りご参加も大い
に歓迎します。
(五一、一、一二幹事安村)
(転写注) 11月例会「邯鄲」子方の中田あやの夫君名「友治郎」を「友次郎」に訂正。
1月例会「景清」の「ツレ」の役名は「ヒメ」と表示されているまま転写。