(原文はB5判 縦書き3段組み)
東 京 凌 霜 謡 会
十二月例会記
十二月例会兼忘年会を十二月五日(日)六日(月)の両日、箱根姥子温泉の簡易保険
保養センターに遠出して開催した。参加申込は男性十名女性二名計十二名であったが、
寒気の到来と例年に見ない異常乾燥による風邪の流行と、当会の数日前に高田夫人(大5
高田透氏夫人)が足部の怪我のため出席を見合され、それに伴ってお連れの松川夫人(大
5松川武一氏夫人)も欠席せられる等のことが重なり、出席者近藤得三(明43)三田三郎
(大5)岩田瑛(大9)今井明(大11)田中梅作(大11)安村慶次郎(昭4)の六人の小人
数になったが、小人数は小人数だけでまた良いところもあり、全員が一卓に集り歓談に
時の経過を忘れる始末で中々面白かった。殊に風は少しあったもの好晴で食堂から仰い
だ霊峰富士の雄姿は頗る印象的であったし、又すっかり枯野の色と化した仙石原の上手
を御殿場に通ずる二条の延々たる峠道の勾配や、僅かにその北の部分を覗かせた芦の湖
のたたずまい等はいつまでも記憶に残るものであった。
五日(日)午後と六日(月)の午前の番組は下記の通り。
五日(午後四時より六時まで)
藤 戸 シテ 近藤 ワキ 安村
紅葉狩 シテ 今井 ワキ 近藤
六日(午前十時より正午まで)
半 蔀 シテ 安村 ワキ 田中
松 虫 シテ 岩田 ワキ 近藤
安達原 シテ 三田 ワキ 田中
ワキツレ 安村
附 祝 言
姥子温泉は泉質透明、温度快適で頗る結構であった。また往復路共に天気良く大涌谷
の噴煙も殊に白く鮮やかに望まれた。帰途小田原城に立寄り、三田さんに記念撮影をし
て貰って小田原駅で元気に解散した。
(四六・一二・七安村)
正月謡初会
本年の謡初会は一月二十二日(土)午後一時より新宿西大久保の出光寮で開催、下記
の会長挨拶の後、春半ばを思わす温い陽気で真盛りの紅梅の庭を前に下の曲を朗吟した。
年頭挨拶 会長 臼井 経倫(大4)
皆さん、あけましておめでとうございます。今年は近年に見ない清朗暖和の元日を迎
えました。激動の昨年に比べて平安の本年を象徴するものと存じ会員各位のご清福を心
よりお祈り申上げます。
昨年度当凌霜謡会は月例会十二回(内遠出會一回)を催し、素謡のみにても六十曲、
他に独吟、仕舞、一調各十前後の稽古発表を致し、各自の技能の錬磨に役立てることが
出来ました。
本年は更に心を新たにし、一層内容の充実したものに致し度く、会員各位の一段のご
協力を御願い致します。
素 謡
神 歌 シテ 近藤 得三(明43) 千歳 安村慶次郎(昭4)
田 村 シテ 三田 三郎(大5) ワキ 藤井喜代治(大5)
東 北 シテ 松川 光江(松川武一氏夫人)ワキ 岩田 瑛(大9)
ツレ 秋葉 四郎(大9)
二人静 シテ 飯田公太郎(大7) ワキ 丸山 語郎(大14)
独 吟
屋 島 今井 明(大11)
松 風 三木 静雄(昭4)
摂 待 伴 健次郎(昭4)
邯 鄲 シテ 日塔 治郎(明45) ワキ 山口 守常(昭19)
附 祝 言
当会は毎月第三土曜午後一時より午後五時迄素謡五番他仕舞等に当て、午後五時より
七時迄晩餐を共にすることに致して居ります。はじめての方もどうかお気軽にお出掛
け下さい。
(連絡先 東京都新宿区西大久保二ノ三五四 出光寮気付東京凌霜謡会幹事宛) (一・三安村記)