(原文はB5判縦書き3段組み)

            凌霜うたひ会(東京)

            夏 季 別 会 の 記

 

   八月二十二日東京は三十四度何分とかの炎暑だというラヂオの声を耳にしながら、湯上り

浴衣姿に打ち寛ろぎ、素謡の題も涼しい「半蔀」の一曲から夏季別会の幕を切って落す。

は箱根宮の下、よし村旅館、元、郷誠之助氏の別荘だけに数寄をこらした構え、後は翠巒、

は渓流、思い設けぬ絶景に全員時を忘れて謡曲三昧に一夜を過ごす。会する者二十三名、内

十六名は新宿で勢揃いして小田急ロマンスカーを利用し、湯元からは登山電車にゆられて来た。

   夜の懇親会に顔を揃えて見ると、四回生から二十四回生まで二十星霜の隔たりが何処にあるか

と思われるほど、老武者連は元気横溢、これも日夜謡曲に親しむお蔭であろう。翌日は台風の

名残の雨で外出も叶わず、曲目全部を予定通り演了した。茲に出席者名、曲名、並にスナップ

 写真を揚げて当日の記念とする。                  

  (素謡)    半蔀・通小町・女郎花・班女・葵上・放下僧・百萬・松風・三井寺・俊寛

  (独吟)    鵜之段・藤戸

  (独鼓及一調) 天鼓・羽衣・駒之段・花筐・松虫

  (舞囃子)   船弁慶・敦盛・清経

 

 

 出席者(敬称略)

 

  江波戸鉄太郎(明43)、音申吉(明45)、

  日塔治郎(同)、三木六郎夫人(大2)、

  臼井経倫(大4)、松川武一夫妻(大5)、

  藤井喜代治(同)、西川清(同)、高田透(同)、

  小西幸之助(大7)、西村二郎(同)、

  森川瑛(大12)、木阪規矩三(同)、

  玉伊辰良夫妻(14)、三木静雄(昭4)、

  安村慶次郎(同)、清水光次夫妻(昭5)、

  沢木正太郎(賓客)、植村静江(同)、

 

 

 尚、当会は毎月第一土曜の午後、月並会を催していますから、同好の士は何流にかかわらず来会を歓迎します。       

                                          (世話人 高田 透)