(本文はB5判
横書き)
帝都謠曲の研究會
東京朝日講堂の年中行事として、謠曲五派各宗家の連合の會が催ほされて、帝都斯界は
空前の賑はひを見せて居る。ゴルフ、スキーの野外遊戯も悪くはないが土曜から日曜全部
を費やすことに於て家庭奉仕と相容れない點が多い。四疊半に六疊に、さては十疊二十疊、
友少なくとも良く多ければ更によし、獨吟、遠吼え、必ずしも近所迷惑ならず。健康、趣
味、品位自ら備はる十徳兼備の謠曲に如くはなし。在京の友幾百人、定めて各流の流を汲
み、源を極めたる人々多かるべし。長閑なる春の日、素影寒香の裡、半日の遊を共にせんと
す、來れ友よ。
一、時 昭和三年二月五日
一、番組 加茂、俊寛、松風。三輪、安宅、東北、蟬丸、猩々。
七騎落、弱法師、絃上。鉢木、羽衣。
外に獨吟、仕舞、狂言御随意。
△各流派全部觀迎
一、會費 金貳圓以内
一、場處 上野公園又は芝公園内茶亭(追て確報の事)
御出席の御希望者は左記の世話人に通知有之度し、追て會合の席上にて凡て具體的に謠曲
研究會の諸項を議すこと。
日本毛織 音 申 吉
東京朝日 井 上 貴輿記
正和洋行 関 次 吉
三興商会 鈴 木 寛 一