(本文はB5判 横書き)
凌 霜 謠 曲 會
於 三 菱 倶 樂 部
昭和二年十一月十三日午後一時始
凌霜會員の謠曲同好者相集まって、同趣味の者のみで一日淸遊するのも、忙中閑
ありで意義あることゝ思ひ、誰れ彼れの口にする所でしたが實行となると色々障害
もあって延びて居ました。
此度漸く機が熟して觀世流及梅若派の者で初會を開くことになりました。會員中
には同好者も多數あることゝ思ひますが、漸く判明した方々十九名に案内状を差出
しました時、恰も秋の半ばで、ピクニックのシーズンの爲め先約が多く、下記九名
の出席しかありませんでしたが、初めての試みとしては成功と一同喜んで居ます。
時 安 一 郎 君 ( 5) 相 原 正 容 君 ( 5)
吉 川 貢 君 ( 9) 大久保 銀太郎 君 (11)
水 澤 驥 君 (11) 伊 藤 則 忠 君 (11)
井 上 和 吉 君 (12) 栗 岡 治 作 君 (15)
吉 田 英三郎 君 (18)
来 賓 伊 藤 高 麗 氏
先づ此度は觀世流及梅若派の者で判明した方のみで、集まって見れば早速心安く
なってしまひます、最初は遠慮しあって、又皆師匠が違ふものゝ集まりとて、他の
人の腕が判らん爲めお互いに引込み思案ですが、次第に判って來るにつれて、遠慮
もとれて聲も多きく、地もよく合ふ様になり、中々愉快でした。
番組は左の通り。
竹 生 島 シテ 大久保 ツレ 伊 藤 ワキ 吉 川
蟬 丸 シテ 吉 田 ツレ 時 安 ワキ 水 澤
弱 法 師 シテ 栗 岡 ワキ 井 上
井 筒 シテ 柏 原 ワキ 時 安
頼 政 シテ 伊 藤 ワキ 吉 田
紅 葉 狩 シテ 井 上 ツレ 伊 藤 ワキ 水 澤
間 伊藤高麗
仕 舞 松 風 伊 藤
天 鼓 水 澤
蟬 丸 井 上
鵜 飼 伊 藤
松 虫 水 澤
どんな謠曲會が出來るかと危んだ人もあった様ですが、一同歎をつくして、次の
會合を樂しみにして別れたのは、正に九時半でした。
此會は全く自由なものとして、面倒な規則も作らず、會費もきめず當實の實費制度
で開催繼續して行きたいと思って居ます。尚同好會員諸兄も澤山お有りのことゝ思ひ
ますが、不明の爲め失禮して居りますから、何卒ご遠慮なく同好會員御同伴御來會を
大いに歎迎します、次回は下記豫告通りですからそれまでに幹事まで御申越し下さい。
御希望者又は同好者御存知の方は幹事までお知らせ下さい。
次回豫定
場 所 日本生命倶樂部(大阪市東區高麗橋二丁目堺筋西へ入北側)
時 日 昭和三年一月二十二日午後一時始(第四日曜日)
番 組 東北、鉢木、羽衣、放下層、田村、八嶋、二人静、猩々
幹 事 時 安 一 郎 ( 5)
吉 川 貢 ( 9)
大久保 銀太郎 (11)
大 平 千 吉 (11)
伊 藤 則 忠 (11)
井 上 和 吉 (12)
栗 岡 治 作 (15)
吉 田 英三郎 (18)
第1回謡会報告が凌霜謡会誌第22号に上述の通り
掲載されました。
この写真から、向濱さんがテキストにされました。
実際の写真はサイズダウンしてませんので、もう少し
読みやすくなっております。